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事務局からのお知らせ 声明など

「博物館法改正後の博物館政策に対する要望書」 を提出しました

西日本自然史系博物館ネットワーク自然史ネットワークは以下の要望書を文化庁長官あてに提出いたしました.今後の博物館政策に活かしていただくことを望みます.回答をいただくことができましたら改めて報告いたします.

令和5年2月1日

文化庁長官

都倉 俊一

博物館法改正後の博物館政策に対する要望書

西日本自然史系博物館ネットワーク

理事長 山西良平        

日頃より博物館の事業・運営にご指導と支援を賜り感謝いたします。令和4年4月 15 日に博物館法の一部を改正する法律が成立し、令和 4 年法律第 24 号として公布されました。改正を契機として、地域の博物館振興のためにさまざまな施策が講じられるものと期待しております。西日本自然史系博物館ネットワークは、自然史系博物館が社会に果たすべき役割を自覚し、市民の学習支援、自然史科学の振興、地域の自然史資料の保全といった諸活動を、ネットワークによる連携と相互支援を通じて推進してきました。今後のこのような活動おいても、この度の法改正が実りあるものとなるよう、下記の点に着目いただき施策に反映させていただきたく、ここに要望書を提出する次第です。

1.新たな博物館登録制度について

今般の法改正においては懸案の博物館登録制度が全面的に見直され、大幅に改定された。法改正に先立つ文化審議会答申が「各都道府県・指定都市の教育委員会における審査について一定レベルでの質が担保されるように努めることが望ましい」と指摘していたように、新しい登録制度が有効に機能するためには、今後、国レベルで自治体教育委員会を恒常的に指導・支援する体制が必要であり、文化庁においてそのための専門的な組織(自然史系資料への理解を有する人材を含む)が設置されることを要望する。

2.文化芸術振興政策として

改正博物館法では、法の目的に文化芸術基本法の精神に基づくことが追加されている(第1条)。しかし、現行の文化芸術振興基本計画は博物館の文化庁移管前に策定されているため、そこには自然史系博物館や科学館、動物園など科学系博物館の活動に関する言及は見当たらない。今後、自然に親しむ活動や科学を楽しむ活動を同計画の中において位置づけ、関係する博物館への支援を行うことが出来るようにすることが必要である。もちろん科学技術を探求し、理解を促す活動は、科学技術基本計画と密接に関連する事柄であるから、その関係性も視野に入れつつ、全体として科学系博物館の振興・支援がしっかりと行われるように要望する。

 施策例:次期の「文化芸術立国の実現のための懇話会」人選時に、科学教育、自然教育関係者を考慮。科学系博物館も「文化芸術による子供育成推進事業」など文化芸術基本法関連事業の対象に。文化財の保存修復事業の対象に概ね100年を超える剥製や自然史資料、自然科学系文献などを追加。

3.地域政策として

博物館法では個々の博物館に求められる要件が定められているが、それだけでなく、都道府県をはじめとする地方自治体が、文化政策・社会教育政策の一環として、地域に根差した博物館の充実とネットワーク化を推進していくことも重要な課題である。そのための指針を国が策定し、指導されることを要望する。

また、文化財保護法に基づく保存活用大綱がすでに自治体に要求されているところであるが、そこでの博物館および博物館資料の位置づけは必ずしも十分とは言えず、特に自然史系博物館および自然史資料の位置づけは極めて貧弱である。この点に鑑み、保全すべき地域の文化資源の中に、野外の貴重な自然、並びに博物館や民間が保有する自然史資料を位置づけるよう、自治体に対して指導していただきたい。

 施策例:自治体文化財担当者向け研修内容に自然史標本・科学資料の位置づけと取り扱いを導入。

4.自然史資料の保存科学について

歴史資料・美術資料の保存科学については国立文化財研究所などにナショナルセンターといえるような研究機関があり、その成果に基づいて保存管理の基準が作られ、また文化庁や都道府県の指導に反映されている。しかし、自然史資料を含めた科学系資料についてはそうした研究機関がなく、文化庁が定めた基準や指針もない。科学系博物館の所管が文化庁となった今日、この現状を放置することなく、関連する資料の保存科学研究拠点を形成すること、およびその成果に基づいた基準や指導に関する議論を一刻も早く始めることを求めたい。

 施策例:国立文化財機構と国立科学博物館ほか研究者を入れた研究会の設置

5.自然史資料保全の重要性と施設確保の緊急性

過去・現在の自然環境を物語る自然史資料は研究・教育資源としてだけでなく、生物多様性保全、気候変動対策等の施策ための重要な根拠資料でもある。一方で自然史資料はアマチュアコレクターなど民間からの収蔵要請が強く、またカビや虫による劣化の危険が大きく、適切な保存の緊急性が高い資料でもある。このような資料を損なうことなく保全するためには、地方自治体と連携した収蔵場所の確保が喫緊の課題であり、そのためには国としての積極的な施策が必要である。自然史系に限らず、十分な収蔵庫が確保出来ていない国内の博物館の現状はすでに指摘されているところである。文化庁として必要な対策を講じることを求めたい。

 施策例:現状の把握と対応策検討のための研究プロジェクト実施

6.博物館をサポートするデジタル情報のアーカイブ作成のために

大学のデジタル資源アーカイブとしては古くから国立情報学研究所や科学技術振興機構によるサポートがあるが、その恩恵は博物館のごく一部にしか及んでいない。また博物館にとってLG-WANに接続された行政機関ネットワークを利用することは自由度・容量など様々な面で制約が大きい。このため

1.データや画像など、素材としてのデジタルアーカイブ発信

2.博物館の活動成果としての研究紀要・図録・資料目録などの発信

これらを目的とするデータポータルとクラウドバックアップとしてのナショナルバックボーンの設立を求めたい。博物館版情報学研究所あるいは既存組織のサポート範囲拡大は我が国の文化資源のデジタル発信に大きく貢献することが期待出来る。また災害時のデータバックアップとしても重要な仕組みになるであろう。文化情報のデジタル発信にはジャパンサーチのような下流側の整備だけでなく、文化情報を直接生み出す博物館など上流側への投資が重要と考える。都道府県ごとのバラバラな施策でなく、国として標準化する効果も大きいと考えられる。

 施策例:文化財オンラインの自然史資料・科学資料への開放、国立情報学研究所などと連携した博物館発行の文献アーカイブプロジェクトなど

7.学芸員向け研究費・研修の充実

少額の旅費や研究資金でも、博物館学芸員の活動活性化には大きく貢献すると考えられる。科学研究費助成事業の枠の拡大は多くの小規模博物館には相当にハードルが高いものである。むしろ各種機関と協力しての公的な研究助成メニューの創設することや、研修についても各種中間支援団体からの提言を募集し、資金面での支援を実施することで、ニーズに基づいた多様なプログラムを実施することが可能である。西日本自然史系博物館ネットワークもそうした要請があれば積極的に対応していきたい。

 施策例:共同実施による研修の試行

8.博物館政策の調整のための国と地方連携組織

ここまで述べてきたように、地方分権下においても全国の博物館活動を調整し効率的に機能するために、また文化観光立国など国益の確保のためにも、地方と国が協調して博物館政策を推し進める必要は大きい。このためには制度面および資金メカニズムまで含めたナショナルアーツカウンシル的な調整組織など、国、自治体および専門職や研究者による政策研究とその実現のための組織検討を求めたい。

 施策例:現状の把握と対応策検討のための研究プロジェクト実施

9.法改正後のフォローアップと博物館法の全面改正に向けて

国会の附帯決議では、登録制度の活用状況や効果についての調査・検証、博物館の持続的経営を可能とする新たな運営指針の策定、および博物館の設置及び運営上望ましい基準の策定などが今後の検討課題であるとされている。また、このたびの法改正は一部改正にとどまり、懸案の学芸員制度については重要な検討課題として今後に残されたままである。さらに法自体を、博物館を規定する法律から博物館を振興する法律に発展させることも視野に入れた全面改正の取り組みを進めていく必要がある。

今回の法改正に当たっては、文化審議会博物館部会が設置され、答申の作成や関係者の合意形成に大きな役割を果たしてこられた。今後のフォローアップ並びに次の法改正に向けた論議においても、博物館部会の機能と役割は引き続き重要であり、充実・強化させていただきたい。

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福島県警戒区域の再興を担う博物館の復興・再生に向けて(提言)

西日本自然史博物館ネットワークは
地域の自然史資料の恒久的な保存を願い、また東北大震災の博物館支援に関わる立場から、日本博物館協会などとともに
「福島県警戒区域の再興を担う博物館の復興・再生に向けて(提言)」
に賛同しています。
本提言については以下のリンクをご参照ください。
http://www.j-muse.or.jp/02program/pdf/proposal_Fukushima_5
また声明全体に関わるご質問は日本博物館協会へお願いします

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九州豪雨に関してのお見舞い

2012年7月に断続的に九州各地を襲った豪雨に関して、被害に合われた皆様にお見舞い申し上げます。
自然系施設としては熊本・宮崎・大分の幾つかの主要施設に被害はないことは確認していますが、十分な把握はできていません。自然系標本資料などが被災したなどの被害情報、ご相談などありましたら事務局までご連絡ください。

2012年7月18日 西日本自然史系博物館ネットワーク事務局
         naturemuseumnet@gmail.com

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大阪市水道記念館の一時休館に関する見解

2012年4月

 2012年4月現在、大阪市水道記念館は一般公開を停止しています。さる2月末に「本市における施策・事業の見直しの一環として、費用対効果などの観点からの精査を行なうため、4月1日から一時休館させていただきます。」との報道に接し、また2月21日付のホームページにおいて公表されていることも確認しました。http://www.city.osaka.lg.jp/suido/page/0000015210.html
自然史系博物館の事業に携わっている私たちは、野生生物の種の保全をはかるという専門的見地から、また自然の価値や楽しさを普及し教育する立場から、事態の進展を注視し憂慮しています。
 大阪市水道記念館は、日本有数の豊富な河川生態系を有する琵琶湖淀川水系の魚類を網羅的に展示する施設として全国的に知られています。今年3月の時点で保有する淡水魚種は90種を超えていました。水道記念館はこのような展示を通じて大阪市水道局が処理した水(工業用水)の安全性を示す広報施設の役割を担うとともに、淀川の水の恵みを受ける大阪市民にその豊かな自然を伝える教育施設として機能しています。とりわけ「水」を学ぶ小学4年生など多くの子どもたちが校外学習で訪れる体験施設として高い評価を受けています。また飼育技術面においてもその実力ゆえ、環境省及び文化庁から天然記念物であるイタセンパラやアユモドキなどの重要魚種の飼育を許可され、環境省から保護増殖事業を委嘱されてきました。今ではイタセンパラ保護増殖事業など淡水魚の保全の拠点施設としても重要な存在となっています。
 このような理由から、水道記念館の今後については、以下の配慮が必要であると私たちは考えます。

1.淡水魚展示が存続し有効活用されること
 水道事業の広報施設としての活動を縮小せざるをえないとしても、淀川の自然を市民に伝える展示・教育施設として存続させることが必要です。これまで築いてきた無形の資産を活用し、さらなる効果的な学習施設としての再生を願います。

2.存続が叶わない場合には、周辺施設に生品や資料が移管され、事業が継承されること
 市民に淀川の自然とその価値を伝えることは大阪市のみならず沿川の行政にとっての責務です。また、水道記念館に飼育されている魚類はいずれも系統のはっきりわかった重要なものです。琵琶湖淀川水系内でこうした系統をきちんと管理することは、将来の野生復帰のためにも必要なことです。

3.環境省から委嘱されたイタセンパラ保護増殖事業が継承されること

特定非営利活動法人西日本自然史系博物館ネットワーク
naturemuseumnet@gmail.com

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東日本大震災に関わる自然史系標本の救済支援活動について

 東日本大震災ににより被災されたすべての方々にお見舞い申し上げます。
さて、西日本自然史系博物館ネットワークは、昆虫担当学芸員協議会や全国の賛同博物館・職員有志らと共に、陸前高田市立博物館の標本救済に協力しています。
 この取組は岩手県教育委員会と県内博物館・文化財関係者が陸前高田市職員やボランティアとともに行っている陸前高田市立博物館の標本救済の後方支援を行うものです。陸前高田市立博物館は同市を襲った巨大津波によって被災し、学芸員ら職員にも犠牲者が出ています。展示室はおろか、収蔵庫も津波により塩と泥をかぶっている状況です。そのような中、岩手県及び同博物館関係者のご努力に
より、多くの昆虫標本や植物標本が発見され、救済されつつあります。しかしながら、本来乾燥状態で維持すべき標本は泥をかぶったためにカビや一部には腐敗の被害を呈しています。
 今回の私たちの取り組みは、これら被災標本に関し、岩手県内の施設だけでは追いつかない洗浄や再乾燥などの修復作業を遠隔地にて支援、協力するものです。協力可能な各博物館で被災標本を受け入れ、学芸員および知識を持つボランティアが処置をし、岩手へと返還するというものです。ネットワークとしてはこれらの各館の取り組みを仲介し、必要な議論や連絡、可能な範囲での資材調達、今後の取組に向けた検討を行ってまいります。

支援は西日本自然史系博物館ネット会員館だけでなく、全国の博物館や研究室が協力をしています。これらの取り組みにより昆虫標本 標準的な標本箱にして約120ケース相当植物標本10000シートのうち約6000点程度の修復を現在行っています。

 国内では博物館同士の緊急時の相互扶助など協力体制は残念ながらできておりません。現地の被害の大きさもあり、なかなか早急に十分な体制の構築ができませんでしたが、現地での努力を少しでも継続的に支援するために当ネットワークでも今後とも検討と努力を重ねてまいりたいと思います。


参考
西日本自然史系博物館ネットワークの概要
http://www.naturemuseum.net/wp-content/uploads/2022/12/westgaiyo2011.pdf
陸前高田市立博物館収蔵庫の状況及び植物標本処理の概要
(岩手県立博物館 専門学芸員 鈴木まほろ氏作成)
http://www.geocities.jp/curaiwt/rescue/botany.htm

陸前高田市博の被害状況の写真、経緯など
※フルサイズで写真がダウンロードできるようにしていますので、重いで
す。クリック注意。
http://www.geocities.jp/curaiwt/rescue/press1.htm

岩手県立博物館での一次仕分け作業風景
※フルサイズで写真がダウンロードできるようにしていますので、重いで
す。
http://www.geocities.jp/curaiwt/rescue/press2.htm

お問い合わせ
事務局
大阪市立自然史博物館
佐久間大輔・波戸岡清峰
06-6697-6221

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東北地方太平洋沖地震(東北大震災)に際してのお見舞い

2011年3月11日発生の東北地方太平洋沖地震(東北大震災)に際しまして、被災した地域の皆様、また被害を受けられた博物館関係者、自然史科学関係の皆様にお見舞い致します。
自然史系博物館を担う専門集団として皆様の状況を案じています。遠隔地ならでは可能な支援もあると考え、自然史系博物館などの情報収集をはじめつつあるところです。

当面は各地域での人命救援、社会生活の回復を中心に全力が注がれる状況にあると思いますが、その後の博物館や標本等の維持などに関し、ご相談などがありましたら事務局までお声掛け下さい。

本件に関してのお問い合わせ
西日本自然史博物館ネットワーク
担当:佐久間大輔(大阪市立自然史博物館) sakuma★mus-nh.city.osaka.jp ★を@に
                      twitter sakumad2003 TEL 06-6697-3221

追記
各博物館の被災情報・救援情報は有志の手により
http://www45.atwiki.jp/savemuseum/
にてまとめられています。
また関連情報をお持ちの方はお寄せいただくか、またはtwitterでハッシュタグ #jishinmuse にてご報告いただければ幸いです。