13日の夜、NHKニュースにきしわだ自然資料館に浸水した、というニュースが流れました。
館内に大量の雨水が流入し、床上10cmほどになった様子が写されました。
ツイッター、フェイスブック上でもうご存知の学芸員も多いかとは思いますが、西日本自然史系博物館ネットワーク事務局としてはその夜に、同館の学芸員とコンタクトが取れ、以下の様な状況を聞きました。

●13日夜の状況
・浸水は10cmくらい。水防団などで水のかいだしは早い時点で終了している
・冷凍庫と水槽の電源は取り急ぎ生きているので仮復旧
・標本や展示物は2Fより上なので心配ない。1Fは水槽と事務所、多目的ホール(講演会、特別展示なども実施するスペース)、研究室、倉庫だが、ほぼ全面に浸水。倉庫や事務所床置の印刷物は被害。
・多目的ホールの床マットは完全に吸水
・床下の配電パイプが浸水していると思われるので、これからが大変と予想(同
時点での判断)
・電話は不通
などの状況がわかりました。あまり大事にしたくない、との事だったので、西日本自然史系博物館ネットワークの理事と日本博物館協会事務局、全科協事務局のみに情報提供し、MLなどには全面展開はせず、ただすでにニュースで流れていることだったので、標本などに大事はない、ということのみ発信しました。

●14日朝、現地では状況を見て周辺の各博物館や博物館関係者(http://naniwahone.g2.xrea.com/08enseidan1.htmlの関係者など)が駆けつけてくれました。午後からは岸和田市教育委員会からも「郷土文化室」と「スポーツ振興課」などの応援参加が加わり、人数をかけての復旧作業となりました。大阪市立自然史博物館からも支援として大型扇風機(床乾燥用のもの)2台、ウェットバキューム1台、ウエス、新聞紙などをもちこみ、岸和田へ向かいました。

14日の現地での状況としては
・1F入ってすぐの生品展示は無事。
・周りの床はワックスが剥がれた程度、掃除のみ
・一部床に置かれていた化石、鉱物などが水濡れ、外来研究員の方が確認
・エレベーターシャフトに大量に滞水。電気系統は無事なものの、ワイヤーは要交換
・配電パイプ内の水はほぼ抜け、乾燥中です。ドレインへの水抜き配管が機能した。
・ドレインの水抜きも大方完了。
・電気系統の漏電はすべて解消、床コンセントも使えるようになった。
・電話も4台は通常どおり通じるように(1台だけモジュラージャックのショートで使えず)。
・事務室に床置きでおいていた販売用の印刷物、ポスター等に浸水。→廃棄へ
・水槽のLED電灯とネットワークハブ,市役所から支給されているノートPCのACアダプタがダメになったが、PCそのものは無事。アダプタは大抵床にあるのと、水に弱いようです。(一部は乾燥後使用可能になったとのこと)


・学芸デスク周りにあった資料にも一部浸水してしまいました→貴重書から優先して図書関係者の指揮下で新聞紙やペーパータオルで処置、一部は大阪市立自然史博物館へ運んでフリーズドライ対応としました。

・特別展示室、倉庫への浸水を増援部隊で掃除、マットのフロアは真水をかけ、デッキブラシでこすりながらバキュームですう、という手法でとりあえず応急の処置し、扇風機と空調機で乾燥をはかりました。


 このフロアのタイルカーペットは,底面側にゴムシートが張られているタイプのものだったため,専門の業者により表面をしっかり清掃・乾燥させれば,おそらく水が滞留してカビが生えるようなことはない模様とのことで、今後の20日の定期清掃の際に徹底洗浄をおこなう予定だそうです。
15日より開館とのことですが、水分を含んだことによる今後のカビと害虫の発生には警戒が必要かもしれません。

●今回の浸水は高潮や洪水ではなく、豪雨に雨水排水が追いつかなかったことによる、ゲリラ豪雨的な浸水とおもわれます。立地がやや凹地になっている、という点はありますが、このような型の浸水は、ある意味どこでも起こりうる被害とも言えます。
収蔵庫と主な展示室が上階になっていたのは、水害に対しては先見の明とも言えました。
学芸も含め、館の関係者がドレインなどの床下構造を含めて建物構造への理解を深めておくことは、初動対応に重要だとかんじました。

●一方で、水濡れ資料の対処などを見ても、皆さんの手際を見ても過去のレスキューの経験が生かされていたと感じました。西日本自然史系博物館ネットワーク事務局としては今後も研修の機会などを検討したいと思います。

●西日本自然史系博物館ネットワークとしては、今回1)初動の情報収集 2)近隣での活動支援ということで、収束すると判断し、現地の意向もあり組織的な救援要請までには至りませんでした。

 いずれ、きしわだ自然資料館の方から報告をいただくかもしれませんが、取り急ぎの状況報告とさせていただきます。今後の対策のご参考になれば、と思います。確認を頂いた平田さん、ありがとうございました。当日作業いただいた皆さんの尽力に感謝いたします。

報告 佐久間大輔

投稿者 kanri