昨年12月4日に兵庫県立人と自然の博物館で開催したフォーラム「自然史標本はなぜ大切か」のアーカイブ映像を配信します。音声の調整などのために公開が遅くなったことをお詫びします。

【フォーラム】自然史標本はなぜ大切か?(2022年12月4日)

自然史標本は、正しく生物に名前をつけるために欠かせない材料であり証拠品です。標本を活用して、分類学や生態学をはじめとする生命科学研究や環境保全が進められています。近年になって、ゲノム技術や情報技術の発展にともなって、客観的な証拠を伴って系統進化を実証できる時代になりつつあります。特に、古い標本は、過去を復元し、未来を設計するために欠かせない材料になっています。研究だけでなく、生物多様性の保全や材料工学や医療や薬学への活用、考古学や民族学、さらに芸術や教育分野においても、標本は最も重要な研究資源の1つとして認識されています。 一方で、自然史標本の価値には大きな注目が集まっていますが、標本保存を進める体制ついては、国内外において厳しい状況にあります。あまり馴染のない分野の方からすれば、「そんなに集めてどうするの?」、「もっと直ぐに役立つことに予算使いなさい」、「これ以上集めても無駄なんでやめて欲しい」といった近視眼的な意見に、全国の自然史系博物館員は、説得と調整と工夫で対応しています。 改めて、自然標本はなぜ大切なのか?全国の自然史博物館員がこれまで何度も各方面から投げられてきた疑問に、正面から答えるシンポジウムを企画しました。最新の研究分野、収蔵保存の設備と技術、博物館の社会インフラとしての価値論を取扱い、未来のミュージアムのあるべき姿について議論を深めたいと思います。

【プログラム】
開催趣旨説明

  三橋弘宗( 兵庫県立大学/兵庫県立人と自然の博物館 )
講演
Museomics からせまる 絶滅危惧種の保全遺伝学
  中濱直之(兵庫県立大学/兵庫県立人と自然の博物館)

標本ゲノミクス 広義アキノキリンソウのユーラシア拡散史
  阪口翔太(京都大学)

AIを用いた標本デジタル画像の種名判定システムの開発
  髙野温子(兵庫県立大学/兵庫県立人と自然の博物館)

科学的根拠に基づく地球規模の生物多様性保全
   天野達也(クイーンズランド大/WEB参加)

総合討論 「自然史標本の未来」

主催】兵庫県立人と自然の博物館・西日本自然史系博物館ネットワーク

(この事業は、令和4年度文化庁Innovate MUSEUM事業「自然史デジタルミュージアム推進事業」(ネットワークの形成による広域等課題対応支援事業)の支援を受けて実施いたしました)